もぐもく考

主に映画など、感想の日記です。

映画「私の男」感想。(一部ネタバレ含む)

原作(小説)は読んでなかったので、想像してたよりエグく、サラッと描かれてた予告編以上に、二階堂ふみちゃんがとてもエロかったです。

でも熊切監督は愛や人間関係を、かっこ悪いくらい掘り下げるような、そういう画を描きたかったはないでしょうか。

それがこの映画の“美しさ”だと思いました。

 

幼い花(二階堂ふみ)は目覚めると親は津波で亡くなり、避難所でひとりぼっちでいた。そこに叔父の淳悟(浅野忠信)が訪ねて来て、親戚の反対を押しきり、花を引き取り、親子として一緒に暮らすようになる。

幼い頃から花は淳悟を“男”として意識し、いつしか2人は親子以上の関係を持つようになる…

 

二階堂ふみが演じる、高校生の花の、流氷のシーンがとても痛々しくてぐっときました。

愛情や大切なものに優先順位や%(パーセンテージ)を付けるとしたら、女性というのは基本的に0か100しかないのだと思います。

男性ほど世間体を気にしないし、重要だとは思っていない。

さすがに現実だと色々問題もあるし、大人はもっと強かに成長するだろうけど、一番大切なものしか選べないのではないでしょうか。

 

やがて花は社会人になり、男友達とお酒を飲んで帰宅し、酔ったまま寝込んでしまう。

ひとり取り残された淳悟の台詞がとても淋しくて悲しい。

より強い関係を望み、結んだ男女の関係が、今度は同じ血が流れていることで、元に戻る事も逃れる事もできず、切なく、苦しくなる。

 

ラストシーンで家を出た花と淳悟は再会します。淳悟はぼろぼろの格好で落ちぶれ、彼女の隣には別の男性の姿が。花は淳悟に向かって誘うように妖艶に微笑みかけます。

淳悟はおそらく社会的地位や、仕事も失い、花と別れた後も新しい人生を始められず、孤独に生きています。

花は自身の孤独を埋められたのでしょうか…?

 

そして北海道 奥尻島の震災シーンが悲しく、とても切なく感じました。


映画『私の男』予告編 - YouTube

映画「そこのみにて光り輝く」(一部ネタバレ含む)

綾野剛人気ももちろんですが、
北海道函館市が舞台で、
函館出身の佐藤泰志の小説が原作ということもあり
札幌では公開当初から人気が高く
劇場は満席でした。
 
 

ある出来事から、佐藤達夫(綾野剛)は仕事を辞め、誰とも会わず

毎日パチンコ通いと酒を飲み過ごしています。

 
ある日、大城拓児(菅田将暉)と姉の千夏(池脇千鶴)姉弟と出逢います。
仮釈放の身で日雇の仕事にしかありつけない拓児。寝たきりの父親。
千夏は昼は水産加工場で働き、夜は売春をして家計を支えています。
 
達夫は千夏惹かれ、やがて2人は心を通わせます。

投げやりに生きていた達夫は二人と出会ったことによって、

生きていく気力を取り戻していきます。しかしある日事件が起き…。

 
 
主演は綾野剛池脇千鶴
 
特別にファンというわけではないですが、
「この俳優が出てる作品はなんだか面白そう」と期待したくなる二人です。
 
 
監督は呉美保。
 

女性監督の作品ですが、「R15+」指定という事もあり、

なかなか大胆なラブシーン(濡れ場)も!

監督と俳優陣のこの作品に対する気合いを感じます。
 
 
他に菅田将暉さんや火野正平さん高橋和也さんなど出演されてますが、
観ていて、みんなハマり役!と思うほど生き生き(話的には暗いけど)しています。
 
実際にそこで生活しているかのような、素晴らしい空気感でした。
 
 
ラストは朝日の中、千夏に優しく微笑みかける達夫
…という、少し曖昧なシーンで終わります。
 
 
私にはそれがハッピーエンドだとおもいましたが、
絶望的な話でもあったので、見終わった直後はそれが小説や映画の思惑として
正しいのかどうか悩んでしまいました。
 
 
拓児は再び罪を犯し、その事を知った千夏は深く絶望します。
 
千夏はすべてを終わらせようと決意しますが、
その最中に達夫が止めに飛び込んでくるのです。
 
 
この先、千夏は達夫と結婚したからといって、弟の拓児は警察に出動したままですし、
出所後も苦労することでしょう。
貧しい家や父親の介護から逃れられる訳ではありません。
 
でもその絶望の瞬間、達夫はまっすぐな想いで千夏を救いだすのです。
そしてそれが光(希望)であり、達夫と千夏の未来だと思いました。
 
 
すべての終わり、
愛の始まり。
 
 
そこのみにて光輝く」のキャッチコピーですが
そこにすべて集約されてるな〜と思いました。
 
 

映画『そこのみにて光輝く』予告編 - YouTube

ゴードン=レヴィット初監督作品「ドン・ジョン」

映画「ドン・ジョン
ジョゼフ・ゴードン=レヴィット長編初監督作品です。
 
最近では「風立ちぬ」の堀越二郎の英語吹き替えも担当してるらしい。
ハリウッドスターの中でもちょっと異質の存在感があって、大好きな俳優です。
 
俳優としては、緻密に考えて演技をしてそうなタイプなので
監督業もちょっと期待です。
 
 
マッチョでイケイケハンサムのバーテンダー、ジョンは
ポルノサイトや動画が大好き。
現実のSEXよりポルノの方が良いので、特定の恋人は居ません。
友達と夜な夜なクラブで女の子をナンパし、一夜限りの関係を楽しんでいる毎日。
ある日ゴージャスな美女、バーバラ(スカーレット・ヨハンソン)に恋をし
彼女と付き合うようになるが、ポルノ鑑賞を見つかり、咎められてしまう…
 
このストーリーだけではあんまり興味がわかず、
正直、劇場に観に行くのを迷ってしまいました。
 
 
クラブでバカ騒ぎするジョン
ポルノ動画を観て自慰するジョン
ジムで筋肉を鍛えるジョン
車を運転しながら罵倒するジョン
 
大体の女性は、こういう男性の行為、好ましいとは言えないですよね。
(筋トレは悪くないけど、おバカでマッチョな感じとか…)
 
でもバーバラのために、彼女が勝手に申し込んだ(!)夜間クラスに通い
ナンパもやめ、ポルノもやめよう(無理だったけど)と努力します。
 
 
夜学の同級生、年上のエスター(ジュリアン・ムーア)と出会ったことで、
物語にだんだんと違う側面が見えてきます。
 
エスターに「ポルノを観ないで自慰できる?」と質問され
自分自信の問題に気付くのです。
 
 
現実にも男性が女性にポルノムービー的要素を求めることは
結構(というかかなり)あるのではないでしょうか。
でもそれはファンタジーです。
映画のシンデレラストーリーと同じように現実的ではありません。
 
この映画ではポルノに影響された男性の恋愛観や
映画やセレブ、母親やもしくは女友達の影響なのか
完璧なライフスタイルに影響された女性の歪んだ恋愛観が
浮き彫りになってきます。
 
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットのオリジナル脚本だと思うのですが
ポルノ大好き男からこういうテーマに結びつけるところが
意外でとても面白いと思いました。
 
 
男と女が“愛しあう”とは、どういうことだろう。
根底にそんなテーマを感じました。
 
 
「R15+」指定なのもあり、ポルノ動画もガンガン流れ、
なかなか女性にはエグいものがありますが
ラストは意外なほど、スッキリ、爽やかで
見終わると、なかなかいい映画だなあと思えました。
 
でも初々しいカップルには向かないですね。
 
 

映画 ダラス・バイヤーズクラブ (※ネタバレ含む)

2014年アカデミー賞マシュー・マコノヒー

主演男優賞を受賞した話題作です。

 

テキサス州ダラスの電気工・ロンはロデオが好きで

女と酒、賭博やドラッグにまみれた生活を送っていた。

ある日、仕事中の事故により病院に担ぎ込まれて、

HIVに感染した事を知らされる。

のこり30日の余命を宣告された彼は、病院に見放され、

仲間からも差別されつつ、自ら治療法を探そうとする…

1980-90年代の実話を元にしている話です。

 

マシュー・マコノヒー、いい具合にヤバイです。

王道的なハンサム顏だと思うんですが、

減量のお陰でガリガリの長身、当時は流行りだったのか

メディアムヘアーに口髭とドロップ型のサングラス。

かなり胡散臭いです。

 

メキシコの病院で一命を取り留めたロンは、実体験を元に

アメリカで無認可の薬をHIV患者へ売るビジネス、

ダラス・バイヤーズクラブ」を始めます。

 

当時、認可されつつあったエイズの治療薬AZTは

副作用も多く、目覚しい効果が得られないどころか、

寿命を縮めかねない薬。

一方、ロンが提供する、アメリカで無認可の薬は

副作用も少ないものでした。

 

ロンの良いところは“公正”せず、そのスタイルが

いつまでも変わらないところだと思います。

薬は密輸だし、処方箋も偽造、やることはたいがい犯罪ですが、

その中で以前は嫌っていたゲイに対する差別に怒りを覚えたり、

AZT製薬会社、それを認可した機関や病院、医師に怒り、立ち向かうのです。

 

インタビューでマシュー・マコノヒーがこの映画を

「信じられないくらい人間臭いのに、感傷的な感じが全くない」と言ったように、

不治の病で死んで涙を誘う話ではなく、

病気に侵されながらも自由の為に戦い、生きた物語でした。

 

マシュー・マコノヒー以外に、トランスジェンダー・クイーンの

レイヨン役で、ジャレッド・レトアカデミー賞

助演男優賞を受賞しています。

女性的でもある仕草や口調、弱い部分ですら魅力的で

本当、性別を超えて美しかったです。

パンフレット中でレイヨンを「堕天使」と表現してましたが、

ぴったりだと思いました。

 


映画『ダラス・バイヤーズクラブ』予告編 - YouTube

映画 あなたを抱きしめる日まで(ネタバレあり)

王様のブランチでも宣伝してましたが、まんまとハマった1人です(^ ^)

劇場はほぼ満席でした。

 

英国人のフィロミナは50年経って、かつて暮らしていた修道院で、

出産した息子を奪い去られた過去を娘にうちあける。

その後、息子の消息を探しに、失業中のジャーナリスト、マーティンと一緒に旅にでます…

 

ベタな感動作はどちらかというと苦手。

でもこちらはサスペンス・ミステリー要素が強く、ストーリーも面白かったです。

 

話としては面白いですが、実話としては、かなり恐ろしい…

個人的に「汽車にのって」の歌にあるような、アイルランドは“素敵な田舎”

のイメージが強く、このような人身売買的な養子縁組(?)が数多くあることに正直驚きました。

 

キリスト教の多いアメリカやヨーロッパ諸国など、どのような映画として捉えているかは

分かりませんが、かなり宗教問題とゲイ等の人権問題に斬り込んでいるように思えます。

(息子のアンソニーはゲイで、それゆえ、職場で差別を受けてたように描かれていました)

 

カトリック教徒のフィロミナの信心深さは長所でもあり短所でもあります。

 

彼女は息子の存在を「未婚で子供を産んだ事を罪」と思い、50年も隠し続けてきました。

息子を探すために訪ねた修道院でも、シスターが嘘を言っていても、疑う事をしません。

やがてその嘘も明るみになり、息子が母親を恨んでいると思いこみ、自分を責めます。

行き詰まり、教会で「告解したい」と訪ねますが、教会(もしくは神)に対しての葛藤のためか、

結局そこで告解することをやめてしまうのです。

 

最後にマーティンに詰め寄られた悪玉、シスター・ビルデガードは

「私は純潔を守り神に使えている。未婚でセックスし、快楽に身を委ねる人達は罰せられて当然」と、

けして赦しも、謝罪しようともしません。むしろ傲慢です。

対象的にフィロミナは人身売買をしていたシスターを「赦す」と告げます。

 

私は日本も国外の宗教も政治も社会問題に詳しくないですが、

なにか根深いものを感じずにいられませんでした。

 

とはいえ、暗〜い映画でもなく、元カトリックのジャーナリスト、マーティンと

ジュディ・デンチ演ずるロマンス小説好きな主婦フィロミナのコンビが微笑ましい!

ふたりのやりとりが面白く、爽やかな終わり方でした。

  


映画『あなたを抱きしめる日まで』予告編 - YouTube

アナと雪の女王 日本語吹替版

話題のディズニーアニメ、「アナと雪の女王」を観てきました。

上映時間の都合により、日本語吹き替え版を。

吹き替えは気になるけど、正直、字幕が観たかった…

 

吹き替えはご存じ、松たか子と神田沙也加。

マジで凄すぎました!うっすら涙がでてくる〜。

主役ふたりの歌の上手さも予想以上ですが、特に松さんの「Let It Go」の力強さ!

女優の表現力の凄まじさを感じます。

 

こんな完成度が高い吹き替え映画は今まで無いんじゃないか?

字幕(オリジナル)が観たかったと最初に書きましたが、

オリジナルと引けをとらない、もしくはそれ以上に良いのでは?なんて思っちゃいました。

 

あくまでオリジナルを観てない上での感想なので

機会があれば、上映中に字幕も観てみたいです。

 

映画全体としては、ストーリーや映像、楽曲が良い上での感想ですが

やっぱり108分では短かったんじゃないかと…

展開が早いので「レ・ミゼラブル」くらい長くても良かったんじゃないかな。

(子供に長い作品は不向きだと思うのでしょうがないですが)

個人的には少し余韻がほしかったです。

 


一緒に歌おう『アナと雪の女王』「Let It Go<歌詞付Ver.>」 松たか子 - YouTube